2011年12月27日火曜日

【第5弾】三陸沿岸部視察と気仙沼・仮設住宅訪問(12月17-18日)/木村研太さん

◎開催日と場所
・12月18日 気仙沼市本吉町外尾(そでお) *地元の方はこのあたり一帯を『小泉』と呼ぶので文中は小泉で統一している。


◎開催の形態
・18日に、野菜のお土産を持って訪問。


17日 土曜日
早朝の古川駅は薄い雪景色だった。
ここで合流した我々は、レンタカーに乗り込みひとまず石巻方面に向かった。

今回の活動は、グループ内での熟慮の末18日の小泉のみとなった。
イベントの内容の厚みやバランス、グループ内外のスケジュールの調整等があったからだ。
また後述する通り、小泉はいまだ集会所のことが解決していない。
外でのイベントは現在の宮城の気温では無理、とのアドバイスも現地コーディネータ氏から先月の時点で貰っていた。
かと言って、18日のみの日帰り日程というのも、せっかくの東北入りがもったいない。
ならば、土日を使えるだけの時間を使い、宮城から岩手にかけての国道45号線沿いの沿岸部を車でじっくり見てみようということになった。

石巻の市内に入る頃には雪は跡形もなくなっていた。快晴と言ってよい。
石巻の北側から45号線に入るルートを使う。

海に近い戸倉というところから、津波の凄まじい爪痕が見え始める。
陸前戸倉という駅がここにはあったはずなのだが、現在は跡形もない。
重機が何度も入っているようで、この辺り一帯は大規模な開発現場のような状態だ。
駅の跡地に、ブツ切りにされた線路が、綺麗に積み重ねられている。
奇妙な光景だった。


北上して、志津川周辺へ。
大きな町だ。
津波の時の映像をご覧になった方もいらっしゃるだろう。
家屋のコンクリートの土台だけが延々と続き、ところどころ鉄骨だけ残ったビルが何棟も見える。
なにしろ、道路上の車窓から全てが見渡せてしまうのだ。
データで読む被害状況以上のものを、360度全周から嫌でも感じる。

歌津に入る。
南三陸では二番目に大きな町だ。
ここで、個人宅の片付けを手伝っているボラ仲間の陣中見舞い。
労いと、しばしの歓談。

明日活動する小泉(本吉町)を抜けて、大谷海岸(おおやかいがん)へ。
海沿いの駅舎と道の駅の建物が連なったところだ。
道の駅は、仮店舗で営業を再開していた。
ここで昼食をとる。
海岸は護岸のため巨大な土嚢が積まれていたため、海が見えなかった。


県道26号線に入り、南気仙沼を抜けて鹿折唐桑の横を通る。
巨大な漁船が打ち上げられているところだ。
取り壊された家の跡地とそうでない半壊状態の家が延々と続く。
この通りは他のボラ活動で何度も通過しているが、久しぶりに見たら取り壊しが大分進んでいるようだった。

再び国道45号線に乗り陸前高田へ。
グループの岩さんがつぶやいた言葉「巨大で奇妙な造成地」が印象的だった。
高田松原公園と並走する45号線沿いは確かに早くから片付けは進んでいたが、見渡す限り建物の土台だけはしっかり残っているし、水が全く引かない田んぼ(?)も干潟のようにその間に広がっていて、造成地と呼ぶにはあまりにも奇妙な光景だ。
海側にも陸側にも造成地には存在しないはずの瓦礫のピラミッドが林立し、「高田松原公園だったところ」は最早存在しない。
7月に初めてここに入った時は、本当に言葉が出なくなったことを思い出した。

広大な市の中心部は、これまた車窓から全てが見渡せてしまうのである。
津波に襲われた町に共通して見られる光景であり、心にグサリと刻み付けられる印象がまさにこれなのだ。

午後3時半頃、「産直はまなす」に着く。

小さなプレハブのこの建物は、今年の5月から営業を開始した地元の野菜や食材を扱う直売所だ。
ここで野菜を買い、今日の予定は終了。
気仙沼方向に引き返し、国道284号線で一関の宿へ。


18日 日曜日
一面の雪景色の一関を後に、再び45号線の旅へ。
本日は復路。ひたすら南下の旅だ。
昨日休憩した大谷海岸で、宿に届いていた野菜を小分けにする作業を行う。
寒い。風もある。
良く晴れていて沿岸部はわずかに雪が残っている程度だが、日陰の冠水部は凍ったままだ。

本吉町に近づく。

津谷川とその支流沿いを津波が遡り、海抜0mに近いところはほとんど流されてしまった。
小泉の仮設に入居されている人達は、ほとんどその辺りに住んでいたとのこと。
当時川にかかる橋が流され、45号線は分断。
近くの小中学校に避難したものの陸の孤島と化してしまい、支援が受け辛い大変な状態に陥ってしまったという。
Googleのストリートビュウで、この橋の近くの気仙沼線の鉄橋の上に「家が数軒乗っている」のが確認できる。
(現在は仮とは言え、立派な橋がかかっているので通行に問題はない)

この近く、やや北側に45号線と346号線が出会う場所の近くに、気仙沼線の本吉駅がある。
その西側周辺にまで津波が来たことがGoogleマップで確認できる。
海沿いの山の反対側にまで水が来たように見えるが、津谷川とその支流の位置関係からこのような結果となったようだ。
川の流れが津波の被害を左右する、この点留意しておきたい。

平貝の仮設住宅に到着。
代表の方に挨拶すると、「寒いから上がってお茶でも飲め」と。
遠慮なく上がり込んで、お茶を呼ばれる。
みかんや白菜のおしんこなど、次から次へ出してくれる。

白菜のおしんこが実に美味しい。
上がるとすぐ「コタツのある台所」なのだ。
でも、奥さんの工夫でおしんこはキチンと用意されている。
漬けダルは外に置いてあるらしい。

しばし、世間話。
集会所の進行具合が難儀なこと。
体調のこと。
仕事道具一切が流されたこと。(代表は大工さん)
家族のこと。(どうやら無事だったらしい)

「いい町だったんだよ……ホントに」
ポツリと代表がおっしゃった。
聞けば、近くの海岸も消えてしまったという。

外がなにやらガヤガヤしてきた。
ここの仮設の人達が、集まっていた。
予定では、各家を野菜を手みやげに巡回して行くことになっていたのだが、一斉に集まってしまった……らしい。
代表の方が前もって伝えてくれたからなのだが、こうなってしまうともうあとは土産の野菜を手渡すしかない。
来てない人の分も、持って行ってくれるとのこと。
部屋番号と名前を書き取りながら、あっという間に手渡し終了。

再び代表の方が、「上がれ上がれ」と。
遠慮なく上がり込む。
メンバーの河野さんにスナップ写真をお願いしておいたので、持参したポータブルプリンターで人数分プリントアウトすることに。
ついでに代表のお宅の中でみんな一緒にパチリ。これもプリントアウト。
写真プリントは結構喜ばれるんだなと実感。
今回も包丁研ぎの準備をしてきたのだが、出番のないまま出発することに。
ちょうど、集会所の件で代表の知り合いが訪ねて来てくれたタイミングだった。

さて再び45号線の旅。

昨日寄った歌津に再び立ち寄った。
去る12月13日にオープンしたての、伊里前「福幸」商店街が気になっていたのだ。
家の土台だけが並ぶ町の中心部に、コンテナで建てられた新たな商店街。
屋台も出ていたので、早速買い食いタイムだ。


気仙沼線の歌津駅も気になっていたので、見に行く。
高台にあるので駅舎は無事だが、駅舎に上がる二つの階段のうちの一つと線路は壊滅状態。
ホームも土台ごと一部欠損。


商店街に戻ると、ミニライブやお囃子のイベント。
今後の商店街の行く末が気になる。
仮の建物から本番の建物への移行はあるのだろうか。
あるとすればいつ頃なのだろうか。
町が町のカタチを取り戻すのはいつのことだろうか。


南下し清水浜を経て、志津川へ立ち寄る。
本浜町という港寄りのところを歩いてみた。
欠壊した堤防周辺は、コンクリート地面が根こそぎ持って行かれている。
他の港などでも見られる光景だ。
港そのものが破壊されてしまうという、後々まで尾を引く激甚災害。


少し引き返して、志津川の「住宅密集地らしきところ」の「細い路地裏らしきところ」を歩いてみる。
土台の痕跡はハッキリしているので、町の様子はなんとなくだが分かってしまうのだ。
怖いとか淋しいとか、もっと何か感情が湧いてくるかと思っていたが、妙に心が静かだった。
でも、自分の感情に何かブレーキがかかっているような感覚もあった。
そういう装置が自分の内側にあるのかもしれない。


もしもここが自分の故郷だったら?
多分、ここに立つことは出来ないかもしれない。

そろそろ旅の終わり。
昨日の逆のルートで、古川駅に向かって行く。
太陽が沈んでいるわけではないのに、午後3時を過ぎると空がうっすらと夕方の色になってくる。
そうなると不思議と気持ちが急かされてくる。



この辺りは2月が寒さのピークだと、ある人に聞いた。
その人は、「2月に向かって徐々にさむくなっていくこの感覚はいやな感覚」とも言った。

季節が進むと、さらに空の色に急かされるのだろうか。
冬の東北をもっと知りたいと思った。


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